Inheritance & Will Q&A

相続・遺言のよくある質問

相続や遺言で迷いやすいポイントを、弁護士ができるだけ専門用語を使わずに解説します。
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遺言書のQ&A

遺言書の必要性、作成方法、公正証書遺言、書き直しや保管について弁護士が解説します。

遺言書を作成したことを家族に伝えるべきですか?

必ずしも内容まで伝える必要はありませんが、作成したことや保管場所は伝えておくことをおすすめします。 遺言書が見つからなければ、せっかく作成しても希望どおりに相続が進まない可能性があります。 特に自筆証書遺言の場合は、保管場所や法務局保管制度の利用の有無を家族や信頼できる方に伝えておくと安心です。 なお、遺言書を作成する前に、どのような遺言書を作成するかを家族に相談することは避けた方が良いです。遺産分割の紛争の前倒しになるおそれがあるからです。

生前贈与と遺言書はどちらが良いのでしょうか?

どちらもメリット・デメリットがあります。 まず、生前贈与の場合、すぐに、所有権を贈与したい相手方に移すことができますし、暦年贈与を使うことで相続税の負担をある程度回避するというメリットがありますが、他方で、一度贈与をすると取り消すことは基本的にできませんし、一括で大きな財産を贈与すると、相続税よりも多額の贈与税が発生する場合があります。 これに対して、遺言書による場合には、遺言書はいつでも書き換えができますし、遺言書は遺言者が亡くなるまでは効力を発生しませんので、上記の生前贈与のリスクは軽減しますが、例えば教育資金の贈与などは、相続を待っていては目的が達成できなくなったりします。 なお、相続税・贈与税に関しては、それぞれ控除の特例などで有利・不利がありますので、相続税に強い税理士の先生に確認していただくことが大事です。 生前贈与と遺言書による財産移転は、状況や目的に応じて使い分けることが大事で、場合によっては併用することも有効です。

自宅しか財産がない場合でも遺言書は必要ですか?

必要になるケースは少なくありません。 自宅不動産は分割しにくいため、相続人同士で意見がまとまらないことがあります。 誰が自宅を相続するのかを遺言書で明確にしておくことで、相続手続きが円滑になり、家族間のトラブル防止につながります。

再婚して前婚の子どもがいる場合や、実子と養子がいる場合には、遺言書は必要ですか?

はい、これらは、特に遺言書の作成の必要性が高いケースです。 再婚家庭では、現在の配偶者と前婚の子どもが共同で相続人となることがありますし、前婚のこと現在の子ども同士、養子と実子、あるいは養子同士が相続で揉めることも珍しくありません。感情的な対立が生じやすいのです。 遺言書によって財産承継の意思を明確にしておくことで、争いを防ぎやすくなります。

遺言書はどこに保管すればよいですか?

遺言書の種類によって異なります。 公正証書遺言の場合は原本が公証役場で保管されます。自筆証書遺言の場合は、法務局の保管制度を利用するか、金融機関の貸金庫など安全な場所に保管することが望ましいです。 ただし、家族が遺言書の存在を知らなければ活用できないため、保管場所を信頼できる方に伝えておくことも重要です。 なお、当事務所に自筆証書遺言の作成を依頼され、当事務所の弁護士を遺言執行者に指定された場合には、当事務所で遺言書を保管いたします。

遺言執行者とは何ですか?

遺言書の内容を実現するために手続きを行う人です。 預金の解約や不動産の名義変更など、相続手続きを進める役割を担います。 相続人が多い場合や、相続人以外に財産を残す場合は、遺言執行者を指定しておくと手続きがスムーズになります。

法務局の自筆証書遺言保管制度とは何ですか?

自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度です。 この制度を利用すると、遺言書の紛失や改ざんを防ぐことができ、相続開始後には相続人が遺言書の有無を確認することもできます。ただし、一定の書式の指定がありますので、ご注意ください。 また、法務局で保管された遺言書は家庭裁判所での検認手続きが不要になります。

子どもがいない夫婦でも遺言書は必要ですか?

特に作成をおすすめします。 子どもがいない場合、配偶者だけでなく、亡くなった方の親や兄弟姉妹が相続人になることがあります。そのため、遺産分割の手続きで配偶者に大きな負担がかかるケースがあります。 「全財産を配偶者に相続させる」という遺言を残しておくことで、配偶者を守りやすくなります。

相続人以外の人に財産を残すことはできますか?

はい、可能です。遺贈と言います。 遺言書を作成することで、内縁の配偶者、お世話になった親族、友人、福祉団体などに財産を譲ることができます。最近では、氏の変更を望まない内縁関係・事実婚を選択されるカップルも少なくなく、このような場合には、遺言書の作成は大事です(というか、必須です!)。 法定相続人以外へ財産を残したい場合は、ぜひ遺言書を作成しましょう。

遺言書が無効になるのはどのような場合ですか?

法律で定められた方式に従っていない場合、遺言書は無効になることがあります。 自筆証書遺言では、日付が記載されていない、本文をパソコンで作成した、署名がない、押印がないなど、自筆証書遺言としての要件を満たしていない場合が考えられます(公正証書の場合には、このような無効はあまり考えられません。)。 また、よく問題となるのが、遺言作成時に遺言能力(意思能力)です。遺言書を作成するためには、きちんと、遺言者が内容を理解していることが必要なのです。他方で、認知症との診断がなされたら、もはや、遺言書を作成できないというものでもありません。認知症にも程度がありますし、症状がよくなることもあり得ます。 せっかく作成した遺言書を確実に実現するためにも、専門家によるチェックを受けることをおすすめします。

自筆証書遺言と公正証書遺言はどちらがおすすめですか?

それぞれにメリット・デメリットがあります。 自筆証書遺言は費用を抑えて手軽に作成できますが、方式の不備による無効リスクや紛失・改ざんのリスクがあります。 一方、公正証書遺言は公証人が作成するため無効になる可能性が低く、原本も公証役場に保管されるため安心です。 確実性を重視する場合は、公正証書遺言をおすすめしています。他方で、公証人に作成してもらうだけの時間がない場合には、自筆証書遺言の作成をお手伝いすることもあります。

遺言書はなぜ必要なのですか。

遺言書は、自分が亡くなったのちに、その財産を誰に引き継いでいくかということなどの自分の意思を記したものです。遺言書には、基本的には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があり、民法でその要件が決まっています。それでは、なぜ必要かということですが、第一に仲のいい家族関係を維持して、残された家族が幸せに生活できるようにすることにあります。もし、遺言書がない場合、残された相続人は、自分たちで、法定相続分を基準としてどのように遺産を分けるかを協議する遺産分割協議を行うことになるのですが、この遺産分割協議が家族関係が悪化する温床なのです。というのは、遺産分割協議で分ける財産や被相続人、さらには相続人同士に対する色々な想いあるいは不満が噴出しやすいのです。

遺言書を作成する場合、その内容は事前に法定相続人すべての了承が必要ですか?

いいえ、必要ありません。 遺言をされる方が、単独で、自分が思うとおりに作成することができます。 もし、財産をどのように分けるかについて法定相続人全員の了承を得なければならないとすると大変ですよね。また、一部の相続人には、遺言書の内容を秘密にしておきたいような場合もあります。 ただ、例えば、事業や会社を相続人のうちの誰かに受け継がせるような場合には、受け継ぐ人の事前の了承を得て、場合によっては生前に受け継ぎの準備をしておかなければならないような場合もあります。 遺言書の作成にあたって、法定相続人に話すべきかどうかについて悩んでいる方は、是非一度ご相談ください。

公正証書遺言を作成する場合の立会人って、身内でもよいか?

身内の方でも、相続人となる予定の方や財産を遺贈しようとしている方、それらの配偶者、直系血族(子や孫など)は、証人や立会人になることはできません。 まず、公正証書遺言を作成する場合には、証人2人以上の立会いが必要となります。 そして、次の方は、証人・立会人になれません(欠格事由といいます)。 ①未成年者 ②推定相続人および受遺者ならびにこれらの配偶者および直系血族 ③公証人の配偶者、四親等内の親族、書記および使用人 これらの方々は、証人としての能力が不十分だったり、利害関係が ご質問では、②に当たるかどうかを考えなければならず、例えば、自分の従兄弟であるとか叔父・叔母は証人となれます。遺言者にお子さんがいらっしゃれば、兄弟も証人となれます。 身内で証人をご用意できない場合でも、一定の費用を支払えば、公証役場でも用意をしてくれます。 また、私たちの事務所に遺言書の作成をご依頼いただいた場合には、私たちの事務所で証人をご用意いたします。

遺言書作成に掛かる費用って、どれくらい?

私たちの事務所では、基本的なものであれば、遺産の総額に応じて税別10万円から20万円で承っております。 複雑な内容になる場合には、その内容に応じて個別に見積もりさせていただきます。 公正証書遺言を作成する場合には、別途、公証人の手数料が発生します。 また、私たちの事務所では、遺言書とあわせて、動画により相続や家族への想いを動画にして残すサービスもご用意しております。

そんなに資産がない場合、遺言書は不要だと思うのですが?

そのようなことはありません。 例えば、現在家庭裁判所に継続している遺産分割の事件のうち、その4分の3が、相続財産総額5000万円以下です。 また、万が一、遺産がほとんどゼロに等しいような場合でも、逆にだれがお墓の管理費用を負担するのかといったことで揉めたりもします。 決して、資産がないまたは少ないからといって、揉めないということはありません。

遺言書は書き直しできるのでしょうか?

書き直しできます。何度でも書き直しができます。 むしろ、人生の各ステージにおいて、作成すべき遺言書の内容は、変わっていきます。 例えば、まだ子供が小さい段階での遺言書と、子供が成長して子供にも財産を相続させることを考える場合とでは、当然に、遺言書の内容は変わりますよね。 もちろん、資産内容が変われば、遺言書の書き換えが必要になってきます。 実際に、民法も遺言書の書き直し・書き換えを想定しており、複数遺言書があり、両者の間で定食がある場合には、日付が新しいものに従うこととされています。 また、万が一、新しい遺言書が何らかの事情により無効になった場合には、その前に作成した遺言書が有効となる可能性がありますので、その意味でも、遺言書を書き直していくことは大事です。

遺言書には預貯金の額まで記載しなければいけないのでしょうか?

いいえ。預貯金の額までは書く必要は必ずしもありません。 預貯金は、遺言書を作った後も増えたり減ったりしますから、書く意味があまりないですよね。 なお、公正証書遺言を作成する場合には、その公証人の手数料の算定上、その時点における預金額を公証人に伝える必要はあります。

親にきちんと遺言書を残してほしいのですが、良い方法はありますか?

非常にいい質問ですね(=難しい質問ですね)。 私たちがよく提案するのは、親に遺言書を作って欲しいとお願いする前に、あなた自身が遺言書を作ることです。 というのは、先に下の世代の方がすでに遺言書を作っていれば、上の世代である親に対して、「まだ作っていないの?」と、遺言書の作成を促しやすいですよね。 また、親子で一緒に、弁護士らが行なっている相続セミナーに参加して、さらに法律相談をしたり、自宅に帰ってからセミナーの内容について親子で振返りの家族会議をすることも有効であると考えます。 私たちは、税理士、司法書士、不動産鑑定士、不動産コンサルタント、ファイナンシャルプランナー とチームを組んで、相続対策のセミナーを定期的に行っています。もしよろしければ、一度いらっしゃいませんか。

遺言書を書く場合に、気をつけるポイントはありますか?

特に、自筆証書遺言を作成する場合には、法律の形式を守る必要があります。 具体的には、遺言書全文を手書きで書くこと(※財産目録については、民法改正で一定の様式のもとで、ワープロで作成が認められることになっています)、日付を入れること、署名および押印をすることです。 これまで、押印をしていない遺言書もどきを見かけることがあります。 もし、作成した遺言書が有効かどうかが気になりましたら、一度私たちにご相談ください。

特に遺言書が必要な人ってどんな人ですか?

遺言書は、すべての方が作成する必要があります。 ただ、敢えてその中でも特に、遺言書が必要な方を挙げるとすると、 ①不動産をお持ちの方 ②事業をされている方 ③法定相続分と違う遺産分割を相続人にして欲しいと思っている方 ④内縁の夫婦(法律上の婚姻をされていない方)に財産を残したいとお考えの方 ⑤子供たちの仲が悪くて困っている方 などでしょうか いずれにしても、民法はあくまで遺言書による相続を原則としていますし、遺産分割協議は皆様が考えられている以上に家族の関係が悪化するきっかけになっているのです。 是非とも、遺言書の作成をご検討ください。 私たちが、そのお手伝いをします。

認知症の疑いがあっても遺言できますか?

認知症の疑いがあっても、遺言書を作成できる可能性は十分にあります。 遺言を作成するためには、自身の財産や権利・身分関係がどうなっているのかを踏まえて、誰に何を相続させたりどういう効果を発生させるのが良いかを判断できれば(これを遺言能力と言います。)、遺言書は作成できるのです。 ただ、認知症は、進行していきますので、もし、その疑いを感じるようであれば、できるだけ早くご相談いただければと思います。 私たちは、高齢の方の遺言書作成も経験を有していますので、その方の状況にあった遺言書の作成方法をご提案いたします。

公正証書遺言を作成するために事前に準備する書類を教えてください。

オーソドックスなケースですと、 ・遺言者と相続人の戸籍謄本 ・遺贈される人(財産を譲り受ける人)の住民票 ・不動産の全部事項証明書(登記簿謄本) ・固定資産評価証明書 ・遺言者の印鑑登録証明書 ・遺言者の本人確認資料(身分証明書) というところでしょうか。

遺言をすればそのとおりに内容が実現されますか?

遺言を作成すれば、基本的にはその通りの内容を実現できますが、例えば不動産の登記など色々と手続きが必要です。 ですので、弁護士等を遺言執行者として定めていた方が、より遺言の実現がスムーズになります。 特に、不動産を相続人以外の家族に引き継ぐ(遺贈)場合、遺言執行者がいるのといないのでは、手続きの大変さが全く違ってきます。 私たちが遺言書の作成のご依頼をいただく場合、そのほとんどで、私たちを遺言執行者に指名していただいています。

家の中から遺言書が見つかったのですが、どうしたらいいですか。

見つかった遺言書が、公正証書遺言であれば、 そのまま遺言の実現に向けて 手続を進めていけば良いのですが、 自筆証書遺言(全文手書きのもの)の場合には、 原則として、家庭裁判所での兼任手続きが必要となってまいります。

遺留分のQ&A

遺留分を請求できる人、計算方法、請求期限や放棄など、判断に迷いやすい点を整理します。

遺留分とは何ですか?

遺留分とは、配偶者や子どもなど一定の相続人に法律上保障されている最低限の相続割合のことです。 例えば、「全財産を長男に相続させる」という遺言を書いた場合でも、他の相続人は遺留分を請求できる場合があります。 遺言書を作成する際は、遺留分にも配慮した内容を検討することが大切です。

遺留分侵害額請求をできる人は誰ですか。

遺留分とは、一定の相続人に認められる最低限の相続分の割合のことをいいます(民法1042条)。 遺留分侵害額請求をできるのは、兄弟姉妹以外の相続人、すなわち、子と直系尊属(父母)です。 基本的には,本来の相続分の2分の1。 ただし、相続人が直系尊属のみの時は3分の1 となっています。 例えば、被相続人の相続人が長男、二男、三男の子供3人で、長男に全ての財産を相続させるという遺言書が存在しているとして、二男が遺留分侵害額請求権をした場合、請求できるのは、相続分3分の1に2分の1を乗じた6分の1です。

遺留分の算定に当たり抵当権付債務を控除して計算できますか。

ご質問の趣旨が、例えば、住宅ローンのように、被相続人の所有不動産に付された抵当権の被担保債務が、被相続人の債務である場合には、遺留分の算定にあたって、不動産の価額から債務額を控除して計算することになります。 これに対して、被相続人の所有不動産に付された抵当権の被担保債務が、被相続人の債務ではない場合(すなわち、物上保証の場合)には、原則として、遺留分の算定にあたり、不動産の価額から債務額を控除しません。 債務自体が相続財産ではないからです。 しかしながら、物上保証の場合でも、例えば主債務者が自己破産をすることが明らかで、抵当権を実行される可能性が高く、かつ、その後の主債務者に対する求償も難しいような場合には、債務額を控除して計算することができるでしょう。

他の相続人が受領した生命保険金についても遺留分の請求をすることはできますか。

生命保険金は、初めから受取人が指定されている場合には、生命保険は相続財産ではないので、遺留分の請求をすることはできないのが原則です。 ですので、遺留分対策として、生命保険を活用することは有用なのです。 ただし、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が同情の趣旨に照らして到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、…特別受益に準じて持ち戻しの対象となる」とした最高裁判例があります(最決平16.10.29・判例タイムズ1173号199頁参照)。 ですので、例えば相続財産を大きく超えるような生命保険を特定の相続人に受け取らせているような場合には、その生命保険も遺留分の対象となる可能性があります。 なお、受取人が指定されていない場合や相続人とされている場合、被相続人自身を受取人としているような生命保険については、その保険金は相続財産になりますので、当然遺留分の対象となります。

遺留分を一度放棄してしまうと遺産を一切相続できなくなるのでしょうか。

いいえ。遺留分を放棄したとしても、相続分の放棄とは別ですから、相続することができなくなるわけではありません。 ただ、例えば、遺留分の生前放棄をするような場合(民法1049条)には、他の相続人(ら)に財産をすべて相続させるような遺言書が作成されている場合が多いでしょうから、事実上、相続権の放棄に近いことが多いでしょう。

遺留分侵害額請求の時効はいつですか。

遺留分侵害額請求権は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったときから1年間で時効消滅します。 例えば、被相続人が遺言書を作成していて、相続開始後、その内容を知った時が時効の起算点になります。 このようなことを知らなかったとしても、相続開始のときから10年経過するとやはり時効消滅します。 このように、請求できる期間が短いので、気を付けましょう。 遺留分侵害額請求権の行使方法ですが、一般的には、時効期間が経過する前に相手方に到達したことをはっきりさせるため、配達証明付きの内容証明郵便で行います。 なお、平成30年の相続法改正で、遺留分減殺請求権は、遺留分侵害額請求権と名称が変わりました。

遺産分割のQ&A

遺産分割協議、調停、不動産や預貯金の分け方、寄与分などの疑問にお答えします。

遺言書がある場合には、遺言書と異なる遺産分割はできないのですか?

遺言書が存在している場合には,原則として遺言書に拘束されますので、これに従って相続をすることになります。 ただし、相続人全員が遺言書とは異なる遺産分割の仕方をすることに合意した場合には、改めて遺産分割協議をすることができます。もっともこの場合においても、遺言書の中で遺言執行者が定められており、相続人以外の第三者に相続財産の全部又は一部を遺贈するというような内容の場合には、遺贈を受けるその第三者の同意がない限り、遺贈される財産を勝手に相続人が分割することはできません。 なお、相続人がひとりでも遺言書に従った相続を望めば、遺言書と異なる遺産分割はできません。それだけ遺言書の効力は強いのです。 もちろん、遺言書で分割方法が定められていない相続財産が後日発見された場合には、その分け方について別途遺産分割協議が必要になります。

遺言書の内容に納得できない場合はどうすれば良いですか。

「遺言書がある場合には,遺言書と異なる遺産分割はできないのですか?」でも述べたとおり,原則として,遺言書と異なる遺産分割はできません。 もし,遺言書の内容があなたの遺留分を侵害しているということであれば,遺留分侵害額請求の手続をしましょう。なお,遺留分侵害額請求には,遺留分権利者が,相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間,かつ相続開始の時から10年間という行使期間の制限(民法1048条)がありますので,ご注意下さい。 また,第三者が遺言者に成り済まして遺言書を作成した場合(例えば,自筆証書遺言で,遺言者の筆跡と異なる場合)や,遺言者が遺言書を作成した当時,認知症等により,遺言書を作成する能力がなかった場合には,遺言が無効となり得ます。

遺産分割協議書を作成してしてしまいましたが,内容が腑に落ちません。遺産分割協議のやり直すことはできますか。

きちんと相続人全員で遺産分割協議を作成している場合には,原則として,遺産分割協議のやり直しはできません。 ただし, ・遺産分割協議の際に,相続人の一部が漏れていた場合 ・親子とともに相続人であるにもかかわらず,その親が親権者として子を代理して遺産分割協議を行った(利益相反)場合(この場合には,子について特別代理人の選任が必要です。) ・相続人の一部が,遺産分割を行うために必要な意思能力を欠いていたにもかかわらず,そのまま遺産分割協議がなされた場合(この場兄は,意思能力がない相続人について成年後見人の選任が必要です。) には,特別代理人・成年後見人の選任等の必要な手続きをとって,改めて相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。 また, ・相続人全員が遺産分割のやり直しに同意をした場合 ・遺産分割の際に,重大な財産の漏れがあり,その遺産の存在を知っていれば,遺産分割に合意をしなかった認められる場合(錯誤無効の場合) ・遺産分割をするにあたって,強迫が行われ畏怖したり,騙されたりして遺産分割協議書に調印したとして,強迫・詐欺による取消が認められる場合 には,遺産分割協議のやり直しをすることができます。

遺産分割調停を円滑に進めるためにはどのようなことを心掛ければ良いですか?

遺産分割調停を円滑に進めるためには,分かりやすい申立書や財産目録を作るであるとか,事前にその都度の争点に対してしっかり準備して調停に望むなどということもありますが,一番大事なのは,遺産の分け方以外の紛争を調停に持ち込まないことだと思います。実際に,遺産分割協議や調停の場では,遺産の分け方とは直接関係のない,これまでの様々な不満を主張する方が少なくありません。そうすると,更に相続人同士の感情の対立が強くなり,調停や審判の手続がきちんと進まなくなります。 このようなことを防ぐためにも,遺産分割調停の申立段階から,相続に強い弁護士を代理人とすることをお勧めします。例えば私達であれば,法的にきちんと整理をし,その助教に併せて必要な主張をすることができるだけでなく,依頼者の利益の観点から,冷静に,その主張をしても良いか,それともしない方が良いかを判断し,アドバイスをいたします。 それにより,円滑な調停の進め方ができると思います。

遺産はいらなので,遺産分割調停の手続から抜けたい場合は,どうすれば良いですか? 方法としては,3つ考えられます。

1つめは,相続放棄の申述手続を行うことです。相続開始(すなわち,被相続人が亡くなったこと)を知ったときから3か月以内に家庭裁判所に相続放棄申述の手続きをしなければならないという期間的な制限はありますが,これにより,相続の時に遡って相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。 2つめは,自分の相続分を別の相続人に譲渡することです(相続分の包括譲渡)。これにより,自分の相続分がなくなりますので,遺産分割調停の手続から脱退することができます。 3つめは,遺産分割調停の際に,遺産に対する相続分を放棄して,遺産分割調停から脱退するという方法があります。既に,相続放棄の申述期間が過ぎてしまった場合に,このような方法がとられることもあります。 相続に一切かかわりたくないと言うのであれば,1つめの相続放棄の申述,相続人の誰かの相続分を増やしてあげたいと言うことであれば,2つめの相続分の譲渡が良いと思います。

調停での話合いがまとまらない場合は,どうなるのですか?

遺産分割の審判に自動的に移行します。審判は,調停とは異なり,裁判官が証拠に基づいて判断しますので,一定の結論がそこで出ます。もっとも,遺産分割のような家族観の問題については,可能な限り,当事者の話合いで纏まる方がよいと考えますので,争点について裁判所が判断をしつつ,話合いが可能と裁判官が判断すると,調停に戻ったりもします。

遺産分割審判で不動産を現物分割をする際の注意点を教えてください。

はい,注意点はたくさんあります。まず,一般論としては,遺産の分割方法として, ・現物分割 … 目的物を相続財産をそのままの形で,相続分に応じて分割する方法 ・換価分割 … 相続財産の全部又は一部を売却して換価し,その売却代金を相続分に応じて分割する方法 ・代償分割(全面的価格賠償) … 一部の相続人が,他の共同相続人に対して,代価を支払って取得する方法 ・共有分割 … 各相続人の持分を決めて共有で分割する方法 の4つの方法があります。不動産については,特に建物がある場合には,建物を物理的に分けることはなかなかできませんし,また,更地であったとしても,同じ一筆の土地の中でも,隣地の関連や地質,道路から距離等との関係で,土地の価値を完全に平等にする現物分割は難しいと言えます。

遺産である不動産から生じる賃料収入はどのように扱いますか。

遺産の中にアパート等の収益不動産があった場合,被相続人が亡くなった後の賃料を誰が取得するのかという問題が生じます。というのは,賃料債権は不動産から生じたものではありますが,別個の金銭債権であり,遺産とは別個の財産であるため,遺産分割の対象となるかどうかが問題となるのです(この前提には,金銭債権・債務は,一般的には,遺産分割を待たずに,相続開始と同時に,当然に各共同相続人が,その相続分に従って,分割して取得するものとされているということがあります。)。まず,遺言書でその収益不動産の取得者が決められていれば,相続開始と同時にその者が不動産を取得しますので,賃料も一緒に取得することになります。

遺産の中に預貯金がある場合にはどのようになりますか。

預貯金は,法律上は,銀行等との間の消費寄託契約に基づく預貯金払戻請求権という金銭債権にあたります。そして,金銭債権は,金銭債権・債務は,一般的には,遺産分割を待たずに,相続開始と同時に,当然に各共同相続人が,その相続分に従って,分割して取得するものとされています。そのため,かつては,預貯金は遺産分割の対象とはならないとされていました(最高裁昭和30年5月31日第三小法廷判決等)。でも,この解釈は,預貯金を遺産分割の調整に利用することができず,不便・不平等な結果となっていました。ところが,最高裁平成28年12月19日大法廷判決は,判例を変更し, 「共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。

遺産分割審判に不服がある場合どうすればよいですか。

遺産分割の審判は,話合いである調停と異なり,裁判所が証拠に基づいて遺産分割の方法を決定する手続です。 もし,審判の決定に納得できないという場合には,審判の決定書を受け取った日から2週間以内に即時抗告を行う必要があります。即時抗告の抗告状の宛先は高等裁判所宛ですが,抗告状自体の提出先は,審判のなされた家庭裁判所ですので,注意しましょう。 抗告状は,期間制限がありますので,原審の決定には不服があるので,即時抗告を申し立てるということを書いておけば,具体的な不服の理由を書く必要は必ずしもありません。抗告状に理由を書かなかった場合には,抗告状を提出した日から2週間以内に,抗告理由書を提出する必要があります。抗告状の提出期限とは異なり,抗告理由書については,2週間経過後の提出でも受け取ってもらえることがありますが,期間の徒過はしないように気をつけましょう。 即時抗告の場合,抗告を受けた裁判所は,抗告人にとって原審よりも更に不利な判断をすることも可能ですので,その点は注意が必要です。 即時抗告の決定に不服があるが場合には,更に,最高裁判所に対する許可抗告という手続きがあります。ただし,許可抗告は,抗告の決定に判例と相反する判断があるとか,法令の解釈に関する重要な事項に関する判断がある場合に認められるものであり,非常にハードルが高いです。

遺産分割協議が成立した後,新たに見つかった遺産はどうなるのですか。

これは,遺産分割協議書でどのようなどのように決めているかということによります。 私達が遺産分割協議書を作る場合には,後日発見された財産をどうするかということも条項に入れます。方法は大きく分けて2とおり。 ・「第○条 本遺産分割協議書に記載なき遺産並びに後日判明した遺産については,相続人間で別途協議する。」 ・「第○条 本遺産分割協議書に記載なき遺産並びに後日判明した遺産については,相続人〇〇が取得する。」 どのような条項を入れるかは,遺産分割協議の状況次第ですが,このような文言があるこいうことです。 後日発見された遺産について何にも決めていなければ,当然,別途遺産分割協議が必要となります。 どういう遺産分割協議書を作成すべきかということについては,是非,一度私達にご相談下さい。

遺産分割にあたって債務(借金)はどのようにすればよいですか。

実は,結構やっかいです。 債務は,遺産分割を待たずに,相続開始と同時に,当然に各共同相続人が,その相続分に従って,分割して取得するものとされています。これが原則です。 もちろん,相続人が全員同意すれば,債務についても,法定相続分に基づく分割とは異なる分割をすることはできますが,そのことを債権者に対して,当然に主張することができるわけではなく,債権者は,あくまで原則に従って,法定相続分に従った債務の履行を相続人に対して求める事ができます。 ですので,例えば不動産を取得した相続人がその不動産の住宅ローンを全額引き継ぐというように,債務について法定相続分と異なる分割を定める場合には,予め債権者との協議をしておくことをお勧めします。 もし,すべての財産と債務をひとりの相続人が相続する形を取るのであれば,それ以外の相続人が相続放棄の申述手続きを行うという方法も考えられます。

寄与分が認められるのはどのような場合ですか。

「・特別の寄与とは」をご覧下さい。・特別の寄与とは 特別の寄与とは,相続人が,特別な貢献をして,相続財産の減少を防いだり,相続財産を増加させた場合には,その貢献が認められた分の財産を,その相続人の相続分に加える制度のことを言います。相続人は,被相続人に対して,扶養義務を負っていますので,通常の貢献では,特別の寄与には該当しません。・寄与の種類・類型としては,つぎのような物があります。

相続人以外の人が寄与分を主張することはできますか。

特別の寄与の主張というのは,本来,相続人のみが主張できるものです。これに対して,平成31年の相続法改正により,特別寄与者による特別寄与料の請求という制度が新設されました。これは,被相続人に対して無償で医療看護等の労務を提供した被相続人の親族(特別寄与者)は,相続が開始した後に,相続人に対し,特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払を請求できるというものです(民法1050条)。請求することができるのは「親族」(6親等以内の血族,配偶者及び3親等以内の姻族)です。被相続人の友人等が療養看護をしても特別寄与料を請求できません。手続としては,まずは,当事者間で協議をし,当事者間に協議が整わないときは,特別の寄与者は家庭裁判所に対して協議に変わる処分を請求することになります(調停・審判)。