はい,注意点はたくさんあります。
まず,一般論としては,遺産の分割方法として,
・現物分割 … 目的物を相続財産をそのままの形で,相続分に応じて分割する方法
・換価分割 … 相続財産の全部又は一部を売却して換価し,その売却代金を相続分に応じて分割する方法
・代償分割(全面的価格賠償) … 一部の相続人が,他の共同相続人に対して,代価を支払って取得する方法
・共有分割 … 各相続人の持分を決めて共有で分割する方法
の4つの方法があります。
不動産については,特に建物がある場合には,建物を物理的に分けることはなかなかできませんし,また,更地であったとしても,同じ一筆の土地の中でも,隣地の関連や地質,道路から距離等との関係で,土地の価値を完全に平等にする現物分割は難しいと言えます。そのため,実務上は,換価分割や代償分割の方法が執られることが多いと思われます(地価の高い都市圏では共有分割の方法も珍しくはありません。)。
それでも,不動産を現物分割するという場合には,分割後に建物を建てたいのに建てられない事態を防ぐため,建築基準法上の接道要件等をクリアできているかどうかを確認し,建ぺい率・容積率の問題もきちんと考えましょう。また,法的リスク(隣地との境界紛争や地上権・地役権の設定等)や事実上のリスク(土壌汚染や木の根コンクリート塊等の埋蔵物)の有無も検討しましょう。その上で,不動産の具体的分割方法を決めて,分割をする土地が一筆の土地であれば,土地家屋調査士等に依頼して,測量を実施し,分筆登記をするという流れになります。
現物分割を選択する場合には,クリアしなければならない点が多くありますので,そのことを十分に理解した上で,当事者間できちんと検討をしていただければと思います。